今年の日本リテール業界は、ドラッグストア業界の歴史的な売上高10兆円突破をはじめ、各業態で大きな変革が進行している。AI・DXの本格導入やリテールメディアの急成長など、テクノロジーを軸とした競争が新たなステージに入った。
ドラッグストア業界:10兆円市場へと急成長
ドラッグストア業界は今年度に売上高10兆円を突破し、コンビニエンスストア(11.8兆円)に迫る勢いを見せている。2030年には13兆円産業になると展望されており、リテール業界における存在感は一層強まっている。
成長の背景には調剤事業の拡大がある。ウエルシアホールディングスは今年までに調剤併設率80%の目標を設定し、ツルハも調剤売上高1400億円を計画するなど、各社が医療サービス機能の強化に注力している。さらに、インバウンド需要の回復も大きく寄与している。昨年の訪日外国人旅行者数は約4268万人、旅行消費額も約9.5兆円と史上最高を記録し、ドラッグストアでの購買行動が業界成長を後押ししている。
GMS・コンビニ:店舗戦略とオペレーション最適化
イオンのGMS事業は好調を維持している。今年2月期の国内GMS事業では営業収益3兆6918億円(前期比3.7%増)、営業利益214億円(31.0%増)を記録した。海外展開では特にベトナム事業で2年連続の2桁増収増益を達成し、今年度はGMSとSMで37店舗の開業を計画している。
PB商品戦略では、イオンの「トップバリュ」が今年2月期売上高1兆2000億円(前期比10%増)を記録。来年度は1兆4000億円を目指し、年間売上高10億円以上の「メガアイテム」も120SKUから300SKUまで拡大予定だ。
コンビニ大手3社は今年1月時点で店舗数増加を継続している。セブン・イレブンが1.0%(226店増)、ファミリーマートが0.6%(100店増)、ローソンが0.3%(36店増)となった。しかし、業績は概ね好調ながらも客数減少が懸念事項となっており、既存店舗の収益性向上が重要な課題となっている。
テクノロジー革新:AI・DXとリテールメディアの台頭
今年のリテール業界で最も注目されているのが、AI・DX技術の本格導入である。生成AIを活用した業務効率化や顧客体験向上を図る動きが活発化し、既存のビジネスモデル変革による持続的成長への取り組みが進展している。
リテールテックJAPANでは、流通業界の「人手不足」や「システムのブラックボックス化」などの課題に対する最新ソリューションが注目を集めた。ID-POSデータとAI技術を組み合わせた分析ソリューションは、こうした業界課題の解決において重要な役割を果たしている。
リテールメディア広告市場も急成長を続けている。今年のEC広告市場において、モール内で「買う直前」を捉えるリテールメディアが二桁成長を記録し、最も成長率の高い領域の一つとして位置づけられている。消費者の購買行動データを活用した精度の高いターゲティング広告が、小売業者にとって新たな収益源となっている。
業界展望:データドリブン経営の重要性
リテール業界各社がテクノロジー投資を加速する中、消費者行動の詳細な分析と個別最適化されたサービス提供が競争優位の源泉となっている。特に、ID-POSデータを活用した顧客理解の深化や、AIによる需要予測精度の向上は、在庫最適化や売場づくりの効率化に直結している。
人手不足が深刻化する中で、オペレーション改善とデジタル化による生産性向上は避けて通れない課題だ。今年以降も、データとテクノロジーを駆使した店舗運営の最適化が、各業態における成功の鍵を握ることになるだろう。