「見える化」から「自律的な提案」へ広がるAI活用
2026年3月に東京ビッグサイトで開催された「リテールテックJAPAN 2026」では、ID-POSデータ活用における明確な潮流の変化が示された。これまでのAI活用は売上や在庫状況を可視化する「見える化」が中心だったが、現在はAIが自らデータを分析し、具体的なアクションを提案する「自律的な提案」フェーズへと進化している。
象徴的なのが惣菜部門向けソリューションだ。POS・ID-POSデータをAIが分析し、「商品Aはリピート率が低く夕方の廃棄が多いため、製造数を20%削減すべき」といった具体的な指示を現場に提示する仕組みが登場している。従来は担当者の経験則に頼っていた発注判断が、データに基づく定量的な意思決定へと置き換わりつつある。
発注の「ブラックボックス化」を解消する動きも進んでいる。AIが算出した予測数と実際の売上実績・在庫データを比較し、「なぜこの発注数なのか」「予測は妥当だったのか」を可視化する自動発注ソリューションは、現場が納得感を持って運用できる点が評価されている。AI任せにするのではなく、人がプロセスを理解しながら継続的に改善できる仕組みが、今後のスタンダードになりつつある。
位置情報×ID-POSで広告効果を可視化
ID-POSデータの活用範囲は店舗内の発注最適化にとどまらない。自店のID-POSデータに位置情報(GPS)や商圏データを掛け合わせ、「過去1ヶ月に競合店を利用したユーザー」や「30代の子育て世代」といった条件でターゲットを絞り込み、ピンポイントで広告を配信するサービスも登場している。さらに広告接触者が実際に来店したか、どの商品を購入したか(売上リフト)までを検証し、来店単価(CPA)を可視化する動きも本格化している。
コンビニ業界でも、全国約1万4,700店舗規模のチェーンがポイントカードやアプリの会員IDから得たID-POSデータを活用し、AIによるレシート・アプリ広告配信事業を展開している。ID-POSデータは「購買頻度」「購買金額」「併買パターン」といった顧客軸の分析に強みがあり、店舗軸の分析だけでは見えなかった顧客像の解像度を高めている。
データ収集範囲の拡大と市場成長
データ収集範囲そのものも拡大している。ドラッグストア全国350店の食品・日用品データが新たにID-POS分析サービスに加わったことで、業態横断の比較分析が可能になった。例えばチョコレート売れ筋商品のカバー率は、スーパーでは上位2商品で85%・98%に達する一方、ドラッグストアでは69%・73%にとどまるなど、業態間の品揃え特性の違いが浮き彫りになっている。
市場全体を見ても、小売業界のビッグデータ分析市場は2026年時点で約81億米ドル規模に達し、2031年には約127億米ドルまで拡大する見通しだ。年平均9%を超える成長率が示す通り、データドリブンな売場戦略への投資は今後も加速していくとみられる。
マギーが提供するPAL・PowerID・i-codeといったID-POS分析基盤も、こうした「発注の自動化」「広告効果の可視化」「業態横断のベンチマーク」といった潮流と軌を一にしている。データを「見る」段階から「活かす」段階へ——2026年はその転換点を象徴する年になりそうだ。