需要予測とダイナミックプライシングの融合が加速
2026年に入り、小売業界では「需要予測AI」と「ダイナミックプライシング」を組み合わせた取り組みが目立ち始めている。熊本を地盤に28店舗を展開するスーパー「ロッキー」は、精肉部門を対象にAIによる需要予測と、POSデータに基づく適正価格算出の実証実験を進めている。仕入れ量の最適化と店頭価格の即時調整を同時に行うことで、廃棄ロスの削減と利益率の両立を狙う内容だ。
惣菜部門でも同様の動きがある。サトーとシノプスが共同開発した「AI値引きソリューション」は、広島のスーパー藤三の全26店舗に導入済みだ。これまでベテラン従業員の経験則に頼っていた値引きタイミングの判断と、値引きシールの発行までをAIが一括で担う仕組みで、属人化していた業務の標準化と食品ロス削減を同時に実現している点が注目される。
コンビニ・スーパーで進む「勘と経験」からの脱却
コンビニ業界ではローソンの取り組みが際立つ。全国約1万4000店舗でセミオート発注システムを展開し、販売実績データに基づく精緻な需要予測により、発注業務の時間を44分短縮したうえで、1店舗当たりの廃棄高を前年比で1割削減することに成功している。従来「勘と経験」に依存していた発注業務が、データドリブンな意思決定へと置き換わりつつある実例と言える。
こうした動きは大手チェーンに限らない。中小規模の事業者でもAI発注・需要予測ツールの導入が進んでおり、食品・飲料分野のAI市場は2026年に193億8000万米ドル規模に達し、前年比42.8%という高い成長率を記録しているとの分析もある。イトーヨーカドーをはじめとするスーパーマーケット各社でも、需要予測による食品ロス削減に加え、レジなし決済や顧客動線分析など、AI活用は多角的に広がっている。
次のステージへ:価格戦略・気象データとの連動
業界の関心は、単なる発注自動化から「需要予測と価格戦略を連動させたサプライチェーン全体の最適化」へとシフトしつつある。ウエルシアが導入したAI防犯システムのように、ロス対策の対象は廃棄だけでなく万引きなど不正流出にも広がっており、店舗運営全体をデータで支える発想が定着しつつある。
さらに、気象データとPOSデータを掛け合わせた高精度な需要予測モデルの研究も進んでおり、農林水産省が掲げる2030年度の食品ロス半減目標とも連動する形で、業界全体の技術投資が加速する見通しだ。
こうした潮流の中で、マギーが提供するID-POSデータ分析基盤「PAL」や来店計測ソリューション「PowerID」、AIによる需要予測エンジン「i-code」も、店舗レベルでの精緻な需要予測とロス削減の両立を支える選択肢の一つとして位置づけられる。今後は生成AIとの連携によるショッピング体験の変化も含め、需要予測AIの活用範囲はさらに広がっていくと見られる。