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2026年8月6日

小売CRM地殻変動、2026年の最新動向を読む

#リテールメディア#CRM#ロイヤルティプログラム#ID-POS#パーソナライズ#2026年トレンド

リテールメディア市場、5年で約9倍の急拡大

2026年に入り、日本のリテールメディア市場は805億円規模まで拡大した。わずか5年前には90億円程度だったことを踏まえると、実に約9倍という驚異的な成長を遂げたことになる。この背景には、小売各社が保有するID-POSデータや購買履歴データを広告事業として収益化する動きが本格化したことがある。

特にCriteoなど広告テクノロジー企業は、店舗内サイネージに代表される「オンサイト」施策と、ECサイトやアプリ上での「オフサイト」施策を統合的に運用することで、国内平均ROAS 3,657%という高い成果を実現していると報告している。従来「リテールメディア=店頭サイネージ」というイメージが強かったが、今後はデジタル領域でのデータ統合・整理がさらに進み、オンライン・オフラインを横断した精緻なターゲティングが標準になっていくと見られる。

具体的な事例としては、ファミリーマートが全店展開を完了した「FamilyMartVision」が挙げられる。入口・通路・レジ前という三拠点にサイネージを設置し、ファミペイアプリと連動させることで、個人単位のターゲティング配信を実現している。セブン-イレブンも同様に、アプリを通じて蓄積した購買履歴や行動データを分析し、パーソナライズされたクーポンやキャンペーン情報をリアルタイムで配信する体制を強化している。

スーパーアプリ化とチャネル横断CRMの加速

もう一つの大きな潮流が、決済・予約・顧客サポート・パーソナライズド購買体験までを一つのアプリに統合する「スーパーアプリ化」だ。イオンの「iAEON」はその代表例で、複数の機能をワンストップで提供することにより、顧客接点の分散を防ぎ、CRMデータの一元管理を可能にしている。

こうした流れを後押しするのが、店舗・EC・アプリ間の連携をスピーディーに実現する新サービスの登場だ。タスネット、GMOメイクショップ、ビートレンドの3社が共同で提供する「店舗&ECクイック連携」は、最短1ヶ月でチャネル横断のポイント統合管理を可能にし、中小規模の小売事業者でもシームレスなCRM施策を展開しやすくなっている。LINEヤフーも広告インフラを統合した「LINEヤフーコマース広告」を刷新し、トーク画面内でのパーソナライズ商品広告配信や、残高連動のダイナミッククーポンといった新機能を投入している。

ポイント経済圏の再編とプライバシーの両立課題

CRM・ロイヤルティ施策の裏側では、ポイント経済圏をめぐる企業間競争も激化している。ポイント・クレジットカード・銀行・証券・通信という「5点セット」を保有する巨大企業群による寡占化が進む一方、トヨタ自動車のような異業種プレーヤーも参入を本格化させている。レンタカーをはじめとする各種サービスの顧客IDを統合し、将来的には複数サービス横断でポイントを利用できる基盤づくりを進めている点は注目に値する。

ただし、パーソナライズ施策への期待とプライバシー懸念は表裏一体だ。ある調査では、64%の消費者が「自分のニーズに合った体験を提供する企業を好む」と回答した一方、自分の個人情報が適切に扱われていると信頼している消費者はわずか39%にとどまった。この乖離をいかに埋めるかが、今後のCRM設計における最大の論点となるだろう。

小売各社がID統合やデータ活用を進める中で、精度の高いID-POS分析や購買データ基盤の重要性は増す一方だ。こうした環境変化は、PALやPowerID、i-codeといったID起点のリテールマーケティングソリューションが果たす役割の広がりを示唆しているとも言える。