ドラッグストア・GMSで進む大型再編
2026年のリテール業界を象徴するのが、ドラッグストア業界で誕生した「2兆円グループ」だ。ツルハホールディングスとウエルシアホールディングスの経営統合により、約5600店舗・薬剤師と登録販売者計5万人を擁する巨大グループが誕生した。イオンは4月9日の決算説明会で、この新生ツルハHDを「全世代の健康拠点」として位置づける方針を示しており、単なる店舗網の拡大にとどまらず、地域医療・健康インフラとしての役割強化が今後の焦点になりそうだ。
GMS業態でも再編の動きは活発だ。トライアルと西友による複合業態「トライアル西友」は、2025年末の1号店開業以降、武蔵新城店、二俣川店と着実に店舗数を増やしている。音声付きデジタルサイネージなど先進的な売場技術の首都圏展開も進んでおり、GMSの再生モデルとして注目される。
イオン自体も2026年度重点戦略として「GMS・スーパー事業の構造改革」を掲げ、グループ共同調達を2026年度9000億円、2030年度には1兆5000億円まで引き上げる目標を発表した。店舗単位の改革から物流・プロセスセンターまでグループ横断で最適化を図る姿勢が鮮明になっている。同社の2026年2月期営業収益は10兆7153億円(前年同期比5.7%増)と過去最高水準を記録しており、再編と成長投資が両輪で進んでいる状況がうかがえる。
コンビニは店舗数拡大から「一店舗あたりの生産性」へ
コンビニ業界では、セブン-イレブン・ジャパンが2026年度に200店舗純増(2万1922店舗計画)を打ち出す一方、出店戦略の質的転換が進んでいる。都市部では従来型フォーマットに加え、事業所内などに設置するワンオペ・モバイル精算対応のコンパクト店舗の展開を想定しており、単純な店舗数競争から立地特性に応じた最適配置へとシフトしている。2026年2月時点の店舗数は、セブン-イレブンが2万1722店でトップ、ファミリーマート1万6415店、ローソン1万4697店と続く構図だ。
スーパー業界でも同様の傾向が見られる。日本食糧新聞の分析では「業界は変貌の途上にある」とされ、グループ再編や有力企業の新規エリア進出により、業界ランキングと勢力図の塗り替えが今後も続くと指摘されている。経済産業省関東経済産業局の2026年5月速報でも、百貨店・スーパー販売額は全店前年同月比5.6%増と57か月連続のプラスを記録し、スーパー単体でも45か月連続で前年を上回っており、業態としての底堅さが数字にも表れている。
値上げの質的変化とAI活用による生産性向上
値上げ動向にも変化が見られる。帝国データバンクの調査によれば、2026年1〜4月の値上げ品目数は3,593品目と前年同期の6,121品目から約4割減少した一方、値上げ要因のうち「人件費」由来が過去最高の66.0%に達した。原材料高だけでなく賃上げの価格転嫁が常態化しつつあり、7月には即席麺やパンなど2,269品目の値上げ、10月には加熱式たばこの増税も控えている。
こうした環境下で各社が注力するのが、生成AIを活用した需要予測と棚割り最適化だ。天候・地域イベント・SNSの話題性といった外部変数を組み込んだ予測モデルへの移行が進み、ドラッグストアやコンビニでは本部集中型オペレーションと単品管理の自動化が加速している。ID-POSデータや購買行動データを軸にした需要予測・棚割り提案は、こうした「データ統合フェーズ」における実装ニーズと親和性が高く、店舗数拡大から一店舗あたりの生産性重視へと向かう業界全体の潮流を後押しする技術領域として、今後さらに存在感を増していくだろう。