「2兆円グループ」誕生とGMSの脱総合化が示す業界地殻変動
2026年のリテール業界は、再編の年として記憶されることになりそうだ。業界最大手ウエルシアホールディングスと2番手ツルハホールディングスの経営統合により、新生ツルハHDが発足。売上高2兆3000億円超、国内5600店舗以上を擁する巨大ドラッグストア連合が誕生し、業界構造を一変させた。この動きに続き、セキ薬品や新生堂薬局など中堅チェーンが大手グループ入りする動きも相次いでおり、合従連衡は今なお加速中だ。
一方、GMS(総合スーパー)業態では「脱総合化」が鮮明になっている。セブン&アイ・ホールディングスは、イトーヨーカ堂を含む非中核29社を束ねるヨーク・ホールディングスを投資ファンドへ売却し、総合スーパー事業から実質的に撤退した。祖業であったGMSを手放し、コンビニと食品スーパーを中心とした事業構造へと大きく舵を切った格好だ。
対照的にイオンは、GMS事業の「再活性化」を明確に打ち出している。今年5月に発表した2030年度までの中期経営計画では、最終年度の営業収益15兆円、営業利益5300億円という目標を掲げ、食品小売りやドラッグストア事業とショッピングセンター機能を掛け合わせることで、地域生活インフラとしての存在価値を再定義する方針を示した。プライベートブランド「トップバリュ」も、現在の1兆2000億円規模から2兆円への拡大を目指すという。
コンビニ業界、明暗分かれる上期決算
コンビニ各社の上期決算では、各チェーンの戦略差が業績に如実に表れた。ローソンは増収増益を達成し、AI発注とファストフーズ好調により平均日販が過去最高の60.8万円を記録。ファミリーマートも事業利益が過去最高となるなど堅調だ。その一方で、業界最大手のセブン-イレブンは減益に沈んでおり、長らく盤石とされてきた勢力図に変化の兆しが見えている。
店舗数で見ると、上位3チェーンはいずれも前年同期比で微増を維持しているものの、かつてのような出店ラッシュは影を潜め、業界全体としては成熟期に入ったと言える。今後は単純な店舗網拡大ではなく、既存店の生産性向上や顧客体験の質的向上が各社の競争力を左右するだろう。
データ活用とリテールメディアが競争の焦点に
業態再編と並行して存在感を増しているのが、ID-POSデータやAIを活用したリテールメディア事業だ。コンビニ、スーパー、ドラッグストア、ECプラットフォームが競うように新サービスを展開しており、セブン-イレブンも広告大手との合弁会社を設立してリテールメディア事業に本腰を入れ始めている。
ドラッグストア市場でも、食品(前年比+9.6%)や調剤医薬品(同+13.4%)の伸びが牽引役となり、市場規模はすでに10兆円を突破。業界団体は2030年度に13兆円規模への成長を見込んでいる。こうした成長の背景には、来店客の購買データを精緻に分析し、品揃えや販促施策に反映させる取り組みの深化がある。
小売各社が再編や業態転換に動く中で、各店舗・各顧客の購買データをいかに高精度で可視化し、マーケティング施策や売場づくりに活かせるかが、今後の収益力を左右する重要な差別化要因になっていくだろう。ID-POSデータ分析やAIによる顧客分析は、こうした流れの中でますます重要性を増している。