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2026年9月29日

個客対応CRMへ、2026年リテールの新潮流

#CRM#リテールメディア#ロイヤルティプログラム#パーソナライゼーション#ID-POS

セグメントからひとりへ、CRM戦略の質的転換

2026年、日本のリテール業界におけるCRM戦略は明確な転換点を迎えている。かつて主流だった「年代別」「購買層別」といったセグメント単位のクーポン配布は過去のものとなりつつあり、購買履歴に基づく完全個客対応型のプロモーションが標準になりつつある。

業界団体の調査では、国内の大手食品スーパーおよびドラッグストアの約7割が、直近1年以内に個客単位のプロモーション施策を新規導入または拡充したと回答している。特に注目されているのが「離反予兆検知」に基づくオファー配信だ。購買頻度の低下や購入間隔の変化といったシグナルをID-POSデータから捉え、単発割引ではなく個客ごとに最適化されたオファーを届けることで、購買継続率に大きな差が生まれる事例も報告されている。

ドラッグストア業界の店頭調査でも、クーポンが発行されている商品は他の施策と比べて購入頻度が明確に高いという結果が出ており、パーソナライズされたオファーが実際の購買行動を動かしていることが裏付けられている。

リテールメディア市場の急拡大とプラットフォーム再編

こうした個客対応型CRMを支える基盤として存在感を増しているのが、リテールメディア市場だ。市場規模は805億円まで拡大し、わずか5年前の90億円から約9倍という急成長を遂げている。

Googleが今年2月に発表した「Direct Offers」機能は、購入意欲が高まった特定の買い物客に対し、価格訴求だけでなくロイヤルティ特典やセット商品といった「価値」を軸にしたパーソナライズオファーを提示できる仕組みだ。価格競争一辺倒からの脱却を示す象徴的な動きといえる。

プラットフォーマー側の再編も加速している。LINEヤフーは、Yahoo!ショッピング・LINEショッピング・PayPayモールの広告インフラを統合した「LINEヤフーコマース広告」を刷新し、LINEの月間アクティブユーザー9,500万人超とYahoo! JAPANの月間利用者8,000万人超という巨大な接点を武器に、購買データと連動したトーク画面内パーソナライズ広告や、PayPay残高に応じたダイナミッククーポン広告を強化している。

共通ポイントプログラムの世界でも動きは活発だ。Pontaは2026年8月時点で約36万店舗・155社228ブランドが参加する巨大な生活密着型プラットフォームに成長しており、新規加盟と提携終了が同時進行しながら、常に接点を拡大し続けている。ENEOSでは2200万人規模の公式アプリ会員基盤を活用した顧客接点改革やロイヤルティプログラム開発が進むなど、業界を横断してCRMとロイヤルティ施策の連携が議論の中心になっている。

「点」から「面」へ、体験設計の時代へ

消費者との関係性も質的に変化している。単発のクーポンやオファーという「点」の接点ではなく、継続的な「線」、さらには生活全体を捉える「面」の体験設計へと企業の視点は移行しつつある。生成AIを活用したショッピング体験、すなわち「AIとの会話の中で商品を検索・購入する」という新しい購買行動も広がり始めており、パーソナライズの範囲は店頭やアプリを超えて生活シーン全体へと拡張されつつある。

ID-POSデータとAIを組み合わせた個客理解の高度化は、こうした「面」の体験設計を実現するための基盤技術として、今後さらに重要性を増していくだろう。マギーが提供するPALやPowerID、i-codeといったソリューションも、こうした個客単位のデータ活用ニーズに応える技術群として位置づけられる。セグメントからひとりへ、点から面へ——2026年のリテールCRMは、データとAIを軸にした新たなステージに入っている。