ドラッグストア業界に2兆円超の巨大連合が誕生
リテール業界の再編が、かつてない速度で進んでいる。象徴的な出来事が、イオン主導によるドラッグストア(DgS)業界最大手ウエルシアホールディングスと2番手ツルハホールディングスの経営統合だ。当初計画を前倒しする形で実現したこの統合により、ツルハHDを存続会社、ウエルシアHDを完全子会社とする新生ツルハHDが発足。売上高2兆3000億円超、国内店舗数5600以上を誇る巨大DgS連合が誕生し、業界構造を塗り替えた。
日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)によれば、DgS業界全体の売上高はすでに10兆円の大台を突破しており、今後は2030年度に13兆円産業への到達を目指す動きが加速している。医薬品・化粧品・食品を横断的に扱うDgSは、消費者の生活インフラとしての存在感を一段と強めており、今後も大手間の統合・業務提携が続くとみられる。こうした巨大化する店舗網においては、ID-POSデータを活用した顧客単位の購買分析や、統合後の品揃え最適化がますます重要な経営課題となっている。
GMSは「撤退」と「再活性化」で明暗が分かれる
総合スーパー(GMS)業態は、各社の戦略の違いが鮮明になっている。セブン&アイ・ホールディングスは、祖業であるイトーヨーカ堂を含む非中核事業を束ねるヨーク・ホールディングスを投資ファンドへ売却し、GMS事業から実質的に撤退した。これにより同社は、コンビニエンスストアと食品スーパーを中心とした事業構造への転換を鮮明にしている。
一方、イオンはGMS事業の「再活性化」を掲げ、食品小売りやドラッグストア事業とショッピングセンター機能を掛け合わせた新たな5カ年計画を打ち出した。直近の通期決算では営業収益1兆円超、営業利益は前期比13.8%増と好調に推移したが、続く中間決算ではGMS事業の営業損失が拡大するなど、食品売上の伸び悩みや天候不順による衣料・住居余暇の苦戦も浮き彫りになっている。GMSの収益構造改革は一朝一夕には進まず、各社の試行錯誤がしばらく続きそうだ。
また、中部地方を地盤とするユニーでは、ドン・キホーテのノウハウを取り入れた「MEGAドン・キホーテUNY」への業態転換が進むなど、地域GMSの業態再編も活発化している。
コンビニ大手はAI活用で明暗、食品スーパーもDXが経営課題に
コンビニ業界では、大手3社の中間決算に明確な差が生まれている。ローソンとファミリーマートは中間期として過去最高の営業利益を更新した一方、セブン-イレブンは営業利益が前年同期比9.3%減となった。好調な2社に共通するのは、AIを活用した発注システムやファストフード強化による日販の底上げだ。ローソンでは、AI発注の活用により平均日販が過去最高水準に達したと報じられている。各社とも欠品ゼロと値引き最適化による売り切りを同時に実現する仕組みづくりを急いでいる。
食品スーパー業界でも、店舗DXはもはや「効率化」の域を超え、競争力そのものを左右する経営課題となりつつある。37期連続増収増益を続けるヤオコーの事例では、情報システム部門の改革を起点とした店舗DXの実装が注目を集めている。
こうした業界全体の潮流を踏まえると、再編によって巨大化する店舗網や多様化する業態において、来店客の行動データやID単位の購買履歴をいかに統合・活用するかが、今後のリテール経営の分水嶺になるだろう。ID-POSデータとAI分析を組み合わせたマーケティング基盤の重要性は、業態の垣根を越えてますます高まっている。